精子バイオマーカーと男性不妊の予測
マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、「Human Reproduction」(10月6日掲載)にて、精子ミトコンドリアDNA内に単一測定バイオマーカーを特定し、従来の診断方法よりも高い精度にて男性の生殖能力・機能、妊娠成功率を評価できると発表した。
過去10年から20年間に亘って、精子の分子および細胞機能に対する理解は深まった。しかしながら、一方、研究成果は医療現場には活かされず、依然として、男性不妊は、精子パラメータにて評価されている。
今回、精子ミトコンドリアDNAバイオマーカーは、精子パラメータ(精液量、精子濃度、精子数、精子運動率、精子正常形態率・異常形態率、精子生存率)による従来の診断と比べて、より正確な男性不妊の予測を可能にすると報告された。
ライフスタイルと生殖能力・機能における関係性
研究チームは、妊娠能力と環境の縦断的調査「Longitudinal Investigation of Fertility and the Environment(LIFE) Study」を用いて精子サンプルを評価し、ライフスタイル(環境ホルモンを含む)と人間の生殖能力・機能における関係性を検証した。
精子サンプルは、2005年から2009年の期間にて、ミシガン州およびテキサス州の男性501人を対象に採取された。
受精に伴い、母由来のミトコンドリアDNAが引き継がれ、精子ミトコンドリアDNAのコピー数は、通常、精子形成中に8倍から10倍減少する。先行研究では、男性不妊において、ミトコンドリアDNAコピー数およびミトコンドリアDNA枯渇は、精子の質・受精確率の低下に関連すると報告されてきた。
研究チームが384の精子サンプルからミトコンドリアDNAコピー数およびミトコンドリアDNA枯渇と妊活1年内の妊娠可能性における関連性を分析したところ、精子ミトコンドリアDNAコピー数が多い男性は、周期特異的妊娠の確率が半減し、妊活開始から1年内での妊娠可能性は18%低くなった。
これにより、精子ミトコンドリアのバイオマーカーは、妊娠成立までの時間に関連すると結論付けられる。また、精子ミトコンドリアDNAは、精子の機能に影響を与える生理学的現象を反映していると推測される。
次段階では、不妊治療を受けるカップルにおいて、精子ミトコンドリアのバイオマーカーと受精における関連性を解明するべく、精子ミトコンドリアDNAの変化を仲介する要因を検証していく。
(画像はプレスリリースより)

University of Massachusetts Amherst
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