母親の腸内微生物叢がもたらす影響
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、「Nature」にて、マウスの動物モデル実験を通じて、妊娠期の母親の腸内微生物叢(マイクロバイオーム)が胎児脳の発達に関与する遺伝子を制御し、正常な脳発達を促すと発表した。
今回、妊娠中の母マウスの腸内には、数億ものバクテリア・微生物が存在し、胎児脳が正常に発達するうえで重要となる主要代謝物の小分子を制御していると報告された。
母マウスの腸内微生物叢は、子供の脳機能および行動と関連性があると認められた。妊娠期に母マウスが感染症に罹患する、高脂肪食を食べる、ストレスを受けることにより、子供の脳機能および行動に異常が生じるという。
腸内微生物叢が主要代謝物および生化学的物質に与える影響
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、母マウスの腸内微生物叢が母体血を循環させ、急速に発達する子マウス脳に栄養を運ぶ主要代謝物および生化学的物質に与える影響を検証した。
実験では、母マウスの腸内微生物叢を抗生物質にて死滅させ、無菌環境にて飼育した。母体の腸内を無菌状態にすることにより、胎児脳の発達においてオンになる遺伝子が特定でき、多数の遺伝子がニューロン内の新しい軸索(情報を伝達する突起状の細い繊維)の形成に関与することが明らかとなった。
特に、母マウスの腸内にバクテリア・微生物が存在しない場合、脳の視床(視覚、聴覚、体性感覚などの感覚入力を大脳新皮質へ中継する重要な役割を担う領域)と皮質を結合する軸索の数が減り、長さが縮小した。
影響を受ける部分は、外部環境を感知するうえで重要な能力をもつが、母親の腸内微生物叢が欠如することによって、子供の感覚・知覚行動に異常が生じるという。
研究チームは、少なくとも、マウスでは、在胎中(出生前)から母親の腸内微生物が胎児脳に対して与える影響を通じて、母親の腸内微生物叢と子供の神経システムにおいて相互作用が成立すると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

UCLA
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