境界悪性卵巣腫瘍の妊孕性温存療法
カロリンスカ研究所(スウェーデン)は、「Fertility & Sterility」にて、境界悪性卵巣腫瘍(BOT)の妊孕性温存療法・妊孕性温存手術(FFS)を受けた女性は妊娠可能であると発表した。
境界悪性卵巣腫瘍では、多くの場合が妊孕性(にんようせい)温存療法によって生殖能力を温存でき、体外受精などの不妊治療を要する女性は少数であるという。なお、卵巣腫瘍とは良性、境界悪性、悪性の3つ全てを含む病名であり、境界悪性は良性と悪性(癌)の中間的な悪性度にあたる。
初期の境界悪性卵巣腫瘍に対する妊孕性温存療法が生殖能力に与える影響
境界悪性卵巣腫瘍の妊孕性温存療法に関する先行研究では腫瘍学的治療結果に着眼され、治療後の妊娠・出生率は不確かであった。
今回、研究チームは、スウェーデンの医療データ「Swedish Quality Registry for Gynaecologic Cancer(SQRGC)」を用いて、2008年から2015年の間に初期の境界悪性卵巣腫瘍の妊孕性温存療法を受けた女性(18~40歳)を対象に、初期の境界悪性卵巣腫瘍に対する妊孕性温存療法が生殖能力に与える影響を検証した。
女性213人が、2008年から2015年にスウェーデンで境界悪性卵巣腫瘍の妊孕性温存療法を受け、治療後に62人が出産した。体外受精を受けたのは少数であり、被験者のうち20人(9%)であった。出産した女性は、妊孕性温存療法の治療から76ヶ月にて妊娠し、一方、治療後58ヶ月で妊娠した女性は出産に至らなかった。
また、全体の277人に対して完治率は99%に達した。研究チームは、将来の妊娠・出産にとって、卵巣腫瘍の妊孕性温存療法は安全かつ効果的であると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

Karolinska Institutet
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