妊娠期の殺虫剤・防虫剤使用による影響
信州大学の研究チームは、「Pediatric Research」にて、妊娠期の母親が室内でスプレー式殺虫剤の使用頻度が高い場合、新生児黄疸(新生児高ビリルビン血症)の発症が数倍高くなると発表した。
新生児黄疸(新生児高ビリルビン血症)は生理的現象であり、新生児の血中新生児ビリルビン濃度が高くなって生じる。ビリルビンとは赤血球の分解に伴い、ヘモグロビンから生成される物質であり、病的な状態では皮膚や白目が黄色く染まって見える。ビリルビンは新生児の脳まで達した場合、治療はできず、神経毒性によって脳が損傷する。
妊娠期の殺虫剤・防虫剤使用と新生児高ビリルビン血症における関連性
今回、環境省による疫学調査「エコチル調査」に基づき、妊娠期の殺虫剤・防虫剤使用と新生児黄疸における関連性が検証された。環境省は、環境が子供に及ぼす影響を調査・検証する目的にて、疫学調査「エコチル調査」を実施している。全国15ユニットにて実施中であり、信州大学は甲信ユニットセンターとして調査・検証を行っている。
研究チームは、エコチル調査甲信ユニットセンターが中心となって、2016年4月に収集した妊婦約10万人分のデータのうち妊婦61751人を対象に分析した。
死産、流産、低出産体重児(出生体重2500g未満)を除き、分析したところ、妊娠期の母親が室内でスプレー式殺虫剤の使用頻度が高い場合、誕生した子供おける新生児黄疸(光線療法を要する症状)の発症が1.21倍高くなった。
一方、スプレー式およびローションタイプの防虫剤(虫除け剤)の使用頻度が多い場合、新生児黄疸の発症は0.7倍低くなった。また、衣類用防虫剤、蚊取り線香・電気式蚊取り器、園芸用農薬・殺虫剤には、光線療法を要する新生児黄疸との関連性は認められなかった。
なお、今回の調査では、妊娠末期における殺虫剤・防虫剤の曝露量、殺虫剤および防虫剤の血中濃度に関するデータは収集されていない。
(画像はPediatric Researchより)
Pediatric Research
https://www.nature.com/articles/s41390-020-1100-6NEWS MEDICAL
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