人工的な精子形成の実現
ペンシルバニア大学の研究チームは、「Science Advances」にて、精子形成に重要な酵素SKP1により、男性不妊の特定治療が可能になると発表した。
SKP1は、減数分裂のパキテン期(2回ある減数分裂のうち第一分裂の前期段階)に染色体をペアリングするうえで重要な役割を担う。酵素の主成分はタンパク質であるが、SKP1がない場合、減数分裂は主な発達段階(精子細胞の生成など)である中期に移行できない。
今回の発見は男性不妊の特定治療を妨げる問題を解決させ、精子の前駆細胞・精原細胞はあるものの、精巣内での精子形成に異常が生じたことによる無精子状態を治療できると期待される。
精子形成プロセスとは
身体細胞には、ほんの数時間で細胞分裂するものもある。一方、精子形成プロセスでは、減数分裂のみに14日間要する。特に、パキテン期の染色体ペアリングには6日間掛ける。
パキテン期は極めて重要であり、染色体ペアには、染色体2本間にて遺伝物質を交換させるために調整させる必要がある。パキテン期のプロセスが誤った場合、減数分裂に異常が発生する。結果、精子に問題が生じ、不妊、妊娠損失、先天性欠陥の要因に成り得る。
細胞分裂におけるSKP1の役割
研究チームがスクリーニング調査を実施したところ、パキテン期の減数分裂中、染色体ペアリングを進める領域にてタンパク質が確認された。
そこで、SKP1に着目した。SKP1は、精子や卵子をはじめ、身体細胞の細胞分裂において重要な役割を担う。マウスを用いた動物モデル実験より、SKP1が欠損したマウスでは、減数分裂にて染色体ペアリングができず、細胞は死滅すると報告された。
現在、男性に精子が無い場合、第三者による精子提供を受ける他ない。しかしながら、今回、精子は形成されないが、精子の前駆細胞・精原細胞、つまりは減数分裂前の生殖細胞がある男性は、SKP1により減数分裂を誘発して精子形成を促せることが認められた。
(画像はプレスリリースより)

Penn Today
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