妊娠中に伴う腸内細菌叢の変化
2月7日、済南大学(中国)の研究チームは、「AMERICAN SOCIETY FOR MICROBIOLOGY」にて、腸内細菌叢の変化は妊娠中の免疫反応に影響を与えると発表した。
妊娠中、女性の腸内細菌叢は劇的に変化する。今回、妊娠中に免疫系細胞から分泌されるタンパク質であるサイトカインレベルが変化することにより、母体の腸内細菌叢、血漿および糞便の代謝物が変わることが確認された。
妊娠中の腸内細菌叢の変化が母体の免疫に与える影響
ホルモンの変動、女性の身体構造の変化、免疫系の変化をはじめ、妊娠は母体に多くの変化をもたらす。
また、先行研究では、妊娠と腸内細菌叢の変化における関係性が確認され、代謝産物を通じて母体の生理学的プロセスに影響を与える可能性が示唆された。例えば、微生物叢の乱れは、子癇前症(妊娠高血圧腎症)リスクを高めるという。
そこで今回、研究チームは、健康な妊婦30人(18~34歳、妊娠37週)ならびに健康な非妊婦15人(18~34歳、月経周期14日目)を対象に検便検査と血液検査を行い、妊娠中の腸内細菌叢の変化が母体の免疫に与える影響を検証した。
腸内細菌叢、代謝物、免疫システムの状態を比較したところ、妊婦と非妊婦において、腸内細菌叢のバランスならびにサイトカインレベルに顕著な違いが確認された。妊婦は炎症を促進するサイトカインレベルが低く、炎症に抵抗するサイトカインレベルが高くなり、妊娠中は免疫系が抑制される可能性が示唆される。
また、妊婦の代謝産物は、非妊婦と比べて独自の構成が認められ、炎症誘発性サイトカインレベルの低下との関連性が判明した。
メカニズムの解明には至っていないものの、妊婦の腸内環境に存在する細菌叢が炎症誘発性代謝産物に影響を与え、免疫反応を阻害する可能性があるという。
(画像はAMERICAN SOCIETY FOR MICROBIOLOGYより)
AMERICAN SOCIETY FOR MICROBIOLOGY
https://asm.org/