男性の生殖能力において重要な役割を担うタンパク質
1月25日、大阪大学(日本)の研究チームは、精子の先体反応に不可欠なタンパク質を特定し、「FER1L5」によって精子内カルシウムイオン(Ca2+)濃度が上昇し、先体反応が発生すると発表した。
なお、研究論文は「Science Advances」に掲載されている。
精子の先体反応と「FER1L5」
卵子と精子が融合するには、精子に先体反応が発生する必要がある。先体反応とは、精子頭部にある先体(キャップ状の小胞)が分子を放出し、精子と卵子の受精を可能にする現象である。
今回、研究チームは、Cエレガンズ(線虫)を用いた実験を行い、受精に必須とされるタンパク質「FER-1」に着目したところ、「FER-1」は受精時の膜融合(精子の細胞膜と卵子の細胞膜の融合)とアメーバ運動に重要であることが判明した。
また、哺乳類であるマウスでは、フェルリンタンパク質6種類「DYSF」「OTOF」「MYOF」「FER1L4」「FER1L5」「FER1L6」が、タンパク質「FER-1」に類似しているという。なお、「DYSF」は筋ジストロフィー、「OTOF」は難聴に関与している。
「FER1L4」「FER1L5」「FER1L6」を解析したところ、「FER1L5」が欠如したマウスの場合、精子に先体反応が起こらず、精子と卵子は受精できなかった。一方、「FER1L5」が欠如したメスウスの生殖能力は変わらなかったという。
これより、研究チームは精子の先体反応において「FER1L5」が重要になると結論付けた。今後、ヒトの男性不妊症の新しい治療法と診断方法につながることが期待される。
(画像はScience Advancesより)
Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.ade7607