精子形成の温度依存性
5月26日、日本の研究者らは、「Communications Biology」にて、精子形成は熱に弱く、精子形成の複数のステップは温度による影響を大きく受けると報告した。
精巣機能と温度環境は密接な関係にあり、陰嚢温度が37度以上になると精子形成に障害が起こるという。
精子形成と温度における関係性
精子形成プロセスでは、精巣内にある精母細胞が減数分裂によって精細胞に変わり、精細胞は精子へと変化する。なかでも、多くの哺乳類は、低温で精子を生産する。哺乳類の精子形成プロセスは熱に弱く、精巣の温度が上昇すると精子形成が妨げられ、男性不妊を引き起こすといわれる。
今回、研究チームはマウス精巣の体外培養実験を行い、精子形成と温度における関係性を検証した。深部体温(36~38度)が精子形成に与える影響を比較したところ、精子形成の複数のステップは温度による影響を大きく受けると報告された。
深部体温38度にて精子を5週間培養した場合、異常な染色体が発生して細胞死を起こすことが確認された。減数分裂に異常が生じてDNA二本鎖切断が増え、相同染色体のシナプスが損傷して精母細胞が死滅するという。なお、DNA二本鎖切断は、細胞にとって最も脅威となるDNA損傷といわれる。
37度で培養した場合、生存する精母細胞もあったが、DNA二本鎖切は多く、相同染色体は正しく分配されなかった。一方、精子形成に最適な環境は、深部体温34度であることが認められた。
(画像はCommunications Biologyより)

Communications Biology
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