睡眠が不妊治療に与える影響
3月8日、中国の研究チームは、「Human Reproduction」にて、夜間の睡眠時間と体外受精・顕微授精の結果には関連性があり、短い睡眠時間や質の悪い睡眠は卵母細胞の質を下げ、受精率・妊娠率の低下につながると発表した。
今回、夜間の睡眠時間が7時間未満または睡眠障害の女性では、卵子や受精卵(胚)の回収率が低下することが認められた。なお、睡眠時間と体外受精・顕微授精の結果における関係性は、母体年齢や睡眠の質によって変化するという。
睡眠と体外受精および顕微授精の結果における関係性
これまで、睡眠・覚醒リズム(体内時計)の乱れは、生殖能力に悪影響を及ぼすといわれてきた。しかしながら、睡眠が不妊治療(体外受精、顕微授精)に与える影響は解明されていなかった。
今回、研究チームは、中国のコホート調査「Tongji Reproductive and Environmental cohort」を用いて、2018年12月から2019年9月の期間、体外受精および顕微授精1サイクル目の女性1276人を対象に、睡眠と体外受精・顕微授精の結果における関係性を検証した。
睡眠時間で比較したところ、7時間未満の睡眠時間では、8時間以上の睡眠時間より採取できた成熟卵の数が少なくなった。
あわせて、睡眠中央時刻(眠りに落ちた時刻と朝起きた時刻の中間時刻)や睡眠の質は、受精率と関連することが認められた。1週間あたり3回以上、睡眠に問題が生じた女性群では、睡眠障害のない女性群と比べて、成熟卵および正常な受精卵母細胞の数が減少し、受精卵(胚)の質が低下した。
一方、睡眠時間が長くなると、妊娠可能性の低下につながるとも報告された。睡眠時間が9時間以上10時間未満である場合、7時間以上8時間未満の睡眠時間と比べて、妊娠可能性が低くなったという。
研究チームは、短い睡眠時間や質の悪い睡眠は卵母細胞の質を下げ、成熟や受精を妨げ、結果、着床率・妊娠率の低下につながると結論付ける。
夜間の睡眠時間は、卵母細胞の質、受精卵の質、着床率や受精率と関連性をもち、特に、母体年齢が30歳以上であると、睡眠時間と受精卵の着床率・妊娠率における関連性は大きくなると説明する。
(画像はHuman Reproductionより)
Human Reproduction
https://academic.oup.com/