非閉塞性無精子症に対する先駆的なアプローチ
10月15日、大阪大学は、プレスリリースにて、メッセンジャーRNA(mRNA)は非閉塞性無精子症の精子形成を回復させる可能性があると示唆した。
mRNA治療とは、mRNA(タンパク質を作る情報を有する分子)を用いた新しい遺伝子治療である。今回、非閉塞性無精子症マウスの精巣にmRNAを注入したところ、精子生成と生殖能力が回復したと報告された。
非閉塞性無精子症に対するmRNAの効果
非閉塞性無精子症では、精液内に精子が全く存在しない。ホルモン値ならびに精管は正常であるにも関わらず、精巣で精子が生成されない、あるいは生産量が非常に少ない状態である。
多くのケースでは精子形成に関与する遺伝子の欠陥が原因と考えられるが、現在、非閉塞性無精子症を起因とする男性不妊の治療は難しい。
そこで今回、大阪大学は、ベイラー大学(アメリカ)と共同でマウスを用いた動物モデル実験を行い、非閉塞性無精子症に対する先駆的なアプローチの開発を目指した。
非閉塞性無精子症マウスの精巣にmRNAが入った脂質ナノ粒子を注入したところ、精子生成ならびに生殖能力の回復、生存可能な子マウスの誕生が認められた。
粒子の注入後、精子形成に関与する遺伝子欠陥によって減数分裂が停止した生殖細胞では減数分裂が再開され、注入から3週間で精子が生成された。採取した精子を用いた顕微授精では胚117個から子マウス26匹が生まれ、子マウスの発育は正常であったという。
研究チームは、非閉塞性無精子症を起因とする不妊においてmRNA治療は画期的なアプローチであり、男性不妊の治療が可能になると期待する。
(画像はプレスリリースより)

Research at UOsaka
https://resou.osaka-u.ac.jp/