亜鉛欠乏による影響
ペンシルベニア州立大学は、米国生理学会の年次大会「Experimental Biology 2018」にて、亜鉛欠乏が卵母細胞の成長(卵子の成長初期段階)に悪影響を与えると報告した。
亜鉛は卵巣環境における微量栄養素となり、卵母細胞の成長、生存能力や質に大きく影響する。それゆえ、亜鉛欠乏は卵母細胞の生殖能力を低下させ、女性不妊を引き起こす要因に成り得る。
卵胞とは
卵巣は卵胞(卵母細胞を含む球状の細胞)の集合体である。卵胞は母親の胎内にて形成され、成熟した卵母細胞は排卵により卵胞から放出される。また、卵母細胞の成熟化には、微量元素である亜鉛量が関係する。
これまで、卵胞の大きさ、脳下垂体から出されたホルモン信号に応じて、卵母細胞は排卵されると考えられてきた。今回、卵胞は排卵に備えて、約90日間にて成熟化することが判明した。
マウスを用いた動物モデル実験
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、前胞状卵胞の成長と亜鉛における関係性を考察した。
マウスの卵胞を細胞培養ディッシュ(シャーレ)にて成熟化させたところ、卵胞に亜鉛が欠乏している場合、卵母細胞の分化能力は悪影響を受けた。適切なタイミングにて細胞分裂できず、成熟化は妨げられた。また、亜鉛欠乏は、受精の失敗を引き起こすことが認められた。
同大学のジェームス・へスター(James Hester)教授は、動物モデル実験より、卵母細胞の分化や成長に亜鉛が不可欠であり、受精、受精卵(胚)の成長にも大きく関係すると述べている。
(画像はPixabayより)

American Physiological Society
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