多嚢胞性卵巣症候群と不妊治療の鍼治療
ペンシルベニア州立大学の研究チームは、「Journal of the American Medical Association」にて、鍼治療が不妊治療を補完する作用はなく、妊娠率を高める効果はないと発表した。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に悩む女性に対して、不妊治療における鍼治療の単独療法、排卵誘発剤クロミフェンとの併用療法は効果が期待できないことが明らかになった。
先行研究による定説
これまで、鍼治療は、不妊に悩む女性の生殖能力を改善すると考えられてきた。特に、多嚢胞性卵巣症候群の女性が排卵誘発剤の効果を得られない場合、鍼治療を選択する傾向にあった。
多嚢胞性卵巣症候群は妊娠適齢期の女性に高い割合で起こり、不妊の要因となる。排卵障害を改善する為、第一選択薬としてクロミフェンにより排卵を誘発する。しかしながら、排卵誘発剤により排卵を誘発できない場合も少なくないといわれる。
臨床試験と効果測定
研究チームは、中国21都市、複数の医療機関にて多嚢胞性卵巣症候群と不妊治療を受ける中国人女性1000人を対象に、排卵誘発剤クロミフェンとの併用、プラセボ(偽薬)との併用にて鍼療法を施した。
臨床試験期間を上限6ヶ月と定め、女性は週2回の鍼療法を受け、排卵誘発剤を5日間服用した。研究チームは、臨床試験期間を超え、10ヵ月間にて926人の女性が妊娠に至ったと報告している。
臨床試験による見解
リチャード・S・レグロ(Richard S. Legro)教授は、鍼治療と排卵誘発剤の併用療法により、多嚢胞性卵巣症候群の女性における妊娠率が改善されることはなかったと述べている。合わせて、鍼治療の単独療法、排卵誘発剤クロミフェンとの併用療法において、効果に大差はなかったという。
一方、臨床試験における鍼治療は伝統中国医学の正統的方法とは言い難く、生薬や漢方薬などの使用もなかった。今回の臨床試験は、あくまでも一つの可能性を示したに過ぎない。子宮の血流増加、不妊治療のストレス緩和に対して、鍼治療が効果的であるとの見解もある。
(画像はPixabayより)

Penn State
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