胎児の遺伝子疾患における予防・治療可能性の向上
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン、KKホスピタル、国立シンガポール大学の研究チームは、「Nature Medicine」にて、子宮内の胎児に対して遺伝子治療を行うことにより、生命に関わる神経変性疾患(ゴーシェ病など)を予防・治療できると発表した。
ゴーシェ病とは
ゴーシェ病は遺伝代謝障害であり、次世代へ遺伝し、根治が非常に困難である。グルコセレブロシターゼ(糖脂質「グルコセレブロシド(GBA)」を分解する酵素)の遺伝子変異により生じる。グルコセレブロシドが分解されずに脾臓、肝臓、骨髄、神経系に蓄積され、主症状として骨疾患、貧血、疲労、眼疾患、発作、脳障害など現れる。
マウス胎児を用いた動物モデル実験
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、ゴーシェ病のマウス胎児に対して遺伝子治療の効果を検証した。
子宮にアデノ随伴ウィルス(AAV)を接種することによって遺伝子治療を受けたマウス胎児は、治療を受けていないマウス胎児と比べ、脳の退化が軽減でき、糖脂質の分解が促進された。
また、子宮内にて治療を受けたマウス胎児は、産後18週間生き延びた。一方、治療を受けていないマウス胎児は、産後15日しか生きられず、胎児に対する遺伝子治療には延命効果が認められた。
胎児の先天性疾患治療における展望
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のアハト・ラヒム(Ahad Rahim)博士は、脳の再生能力に限界があり、それゆえ、脳の治療には早期発見・治療が不可欠であると述べている。研究チームは、今回の研究結果における遺伝子治療が胎児のゴーシェ病に限らず、先天性代謝異常にも適用できると結論付けている。
現在、キングス・カレッジ・ロンドン、インペリアル・カレッジ・ロンドン、オックスフォード大学などの研究者が研究チームに加わり、更なる研究を進めている。
(画像はPixabayより)

Nature medicine
http://www.nature.com/articles/s41591-018-0106-7NEWS MEDICAL
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