妊娠初期の鉄欠乏症による影響
中国医科大学付属第一医院の研究チームは、「Thyroid」にて、妊娠初期・中期の鉄欠乏症は、妊娠中期・後期において遊離サイロキシン値を低下させ、甲状腺機能低下症(顕性甲状腺機能低下症)、低サイロキシン血症の発症リスクを高めると発表した。
妊娠期の甲状腺機能低下症や低サイロキシン血症(ともに甲状腺刺激ホルモンの分泌異常、ホルモン値の低下)は、妊娠合併症、胎児の認知機能発達における遅延・異常を引き起こす要因に成り得る。
妊娠初期の鉄量と妊娠後期の甲状腺機能
研究チームは、2012年から2015年に掛けて、中国にて、甲状腺疾患の病歴のない妊娠している女性723人(平均年齢29歳)、妊娠していない女性1645人(平均年齢29歳)を対象に、甲状腺機能と母子の健康影響を検証した。
血液検査にて、可溶型トランスフェリン受容体(鉄イオンと結合して輸送するタンパク質の一種)・血中フェリチン(鉄と結合して貯蔵する性タンパク質の一種)・鉄量、甲状腺機能の指標となる血清甲状腺刺激ホルモン・遊離トリヨードサイロニン(FT4)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)・抗サイログロブリン抗体(TgAb)を測定した。
鉄欠乏症は、血中フェリチン値が12µ/gL未満、可溶型トランスフェリン受容体4.4mg未満、鉄量0mg/kg未満を定義される。
測定結果より、妊娠初期・中期では、鉄欠乏性と遊離トリヨードサイロニンに関連性が認められた。一方、妊娠後期において鉄量と遊離トリヨードサイロニンに関係性は確認できなかった。
研究チームは、妊娠初期の鉄量が妊娠後期の甲状腺機能に影響を与えると結論付けている。
(画像はPixabayより)

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