抗鬱剤が脳活動に与える影響
ワシントン大学の研究チームは、研究チームは、「eNeuro」にて、マウスを用いた動物モデル実験を通して、妊娠期の母マウスが抗鬱剤を服用することにより、胎内の子マウスは悪影響を受け、成人期まで長期に亘って脳における感覚情報処理が変化すると発表した。
これまで、先行研究では、妊娠期の母親が抗鬱剤を服用することにより、胎児は抗鬱剤に晒され、脳活動が変化し、行動や脳構造の変化が生じると報告されていた。
脳発達におけるセロトニンの重要性
現状、抗鬱剤が胎児に与える影響は明確になっていないにも関わらず、妊娠中の女性に対して、抗鬱剤を処方する精神科医は少なくない。
鬱病では神経伝達物質であるセロトニンが重視され、多くのケースでは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が処方され、服用にて安心感を得られるといわれる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、セロトニンの再取り込みの阻害および脳内セロトニン量の増加を促し、神経伝達を改善することにより、鬱病の症状を緩和できる。
しかしながら、選択的セロトニン再取り込み阻害薬による鬱病治療効果が大きいとしても、セロトニンは健康な脳発達および機能にとって重要となる。胎児脳の成長にもセロトニンは重要な役割を担い、それゆえ、妊娠期の母親が選択的セロトニン再取り込み阻害薬を服用すると胎児脳の発達を妨げるという。
妊娠期における選択的セロトニン再取り込み阻害薬の服用と胎児への影響
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、妊娠期における選択的セロトニン再取り込み阻害薬の服用と胎児への影響を検証した。
妊娠期および産後2週間の母マウスに選択的セロトニン再取り込み阻害薬「フルオキセチン」を投与し、光学イメージングに展開した。安静状態において、フルオキセチンを投与したマウス、抗鬱剤を投与していないマウス、ほぼ同一状態の脳であった。
しかしながら、前足を刺激すると、フルオキセチンに晒されたマウスの脳では、感覚情報を処理する領域にて異常な脳活動が認められた。また、影響は胎児期から成人期まで長期に亘って続き、感覚情報処理に変化が生じた。
(画像はeNeuroより)

eNeuro
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