自己抗体の危険性
ドイツ神経変性疾患センター(DZNE)とシャリテ大学医学部は、「Annals of Neurology」にて、自己抗体(自分自身に対する免疫反応)により胚(受精卵)が損失した場合、子供の行動障害(自閉症など)を引き起こす要因に成り得ると発表した。
妊娠期の母親の免疫システムに機能障害が生じると、胎児の脳発達に悪影響を及ぼす可能性がある。
自己抗体とは
妊娠中、抗体が、母親の血中から臍帯(へその緒)を介して胚の血液循環に流れ込み続け、胎児を感染から守る。母体抗体は外来物質に向けられ、病原体から身体を守るが、自己抗体は身体組織を攻撃する。近年の研究では、動物モデル実験により、自己抗体は、子供の行動障害の発症を促進する可能性があると示唆されている。
母親の自己抗体と子供への影響
研究チームは、脳細胞の表面にある特定のタンパク質「NMDA受容体」を標的とする自己抗体に焦点をあて、NMDA受容体抗体が胚の脳に達すると、脳の発達において重要な時期に潜在的かつ持続的な機能障害を引き起こすとの仮定を立てた。
NMDA受容体は、神経の相互接続や正常な脳の発達において不可欠である。NMDA受容体抗体は、比較的よく見られる自己抗体である。脳に達すると深刻な感染症を引き起こすといわれるが、血液脳関門(血液と脳脊髄液における物質交換を制限する機構)が損傷しない限り、症状は現れない。
マウスを用いた動物モデル実験では、母親の自己抗体量が多い場合、胚の脳に達することが確認された。NMDA受容体は減り、生理機能は変化し、神経発達が損なわれた。子供の行動に異常が認められ、幾つかの脳領域は健康な脳と比べて縮小した。
また、母親225人に関するデータを分析したところ、神経発達障害や精神疾患のある子供を持つ女性では、血液脳関門により守られ、自己抗体が生じる頻度が高いと分かった。今後、更なる研究の必要性はあるが、母親のNMDA受容体抗体と精神障害に因果関係があると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

DZNE
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