出生前ストレスと神経保護治療
1月28日、アイオワ大学および大学病院クリーブランドメディカルセンターは、大学プレリリースを通じて、妊娠中に慢性的なストレスを感じる母親に対して神経保護性化合物を投与することにより、出生前ストレス(妊娠中の母親のストレス)が及ぼす悪影響から胎児脳を保護できると発表した。
今回、マウスを用いた動物モデル実験を通じて、外傷性脳損傷に使用される薬剤「P7C3-A20」(神経保護作用をもつ神経保護化合物)には、出生前のストレス曝露から胎児脳を保護する作用があると認められた。なお、研究論文は「Antioxidants & Redox Signaling」に掲載されている。
慢性的な出生前ストレスが及ぼす長期的な影響、妊娠中の母親に対する神経保護治療効果
先行研究では、妊娠中のストレスによる長期的な影響に着目し、出生前ストレスが幼児期および成人期の子供に神経精神障害を引き超す要因に成り得ると報告されている。母親の胎内にて子供が母親のストレス曝露を受けた場合、子供の神経発達障害リスクは増すという。
また、エネルギーが枯渇する毒性または損傷条件下において、神経細胞は、「P7C3-A20」により、エネルギー分子「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD +)」を正常なレベルに維持できることが示された。
先行研究の結果を受け、研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、慢性的な出生前ストレスが及ぼす長期的な影響、妊娠中の母親に対する「P7C3-A20」投与による効果を検証した。
出生前(在胎期)、慢性的なストレスに晒されていた子マウスは、脳内のNAD +合成が止まってNAD+不足状態に陥り、成人期を迎えて鬱病に似た症状が認められた。一方、妊娠中の母マウスに「P7C3-A20」投与を行った場合、子マウスの脳は、妊娠中の母親のストレスが与える影響から保護された。
研究チームは、妊娠中の母親のストレスは胎児脳に悪影響を及ぼすが、母親に対して「P7C3-A20」投与による神経保護治療を行うことにより、出生前ストレスから胎児脳を保護できると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

UNIVERSITY OF IOWA HEALTH CARE
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