妊娠中の新型コロナウイルス感染症によるリスク
1月25日、アメリカの研究チームは、「medRxiv」にて、妊娠中の女性が新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)に感染した場合、胎盤の宿主細胞由来タンパク質「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)」が上昇し、胎盤炎症が生じるリスクが高まると発表した。
新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルス「SARS-CoV-2」により、妊娠初期・中期の胎盤ではACE2レベル上昇および胎盤炎症リスクが増す。母親の免疫システムが強まり、母子の健康に悪影響を及ぼすという。
「SARS-CoV-2」による母親の免疫システム強化
研究チームは、新型コロナウイルス感染症に感染し、PCR検査にて陽性反応が出た妊婦39人を対象に15の胎盤に対してPCR検査を行ったところ、ウイルスRNAが検出された胎盤は2つであった。
胎盤感染は、胎盤のウイルス受容体およびACE2が低レベルであることに起因する。低レベルのACE2メッセンジャーRNA(mRNA)を示す遺伝子発現レベルとは対照的に、妊娠初期・中期における胎盤の合胞体性栄養膜では、ACE2タンパク質は大量に発現した。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症に感染した妊婦の満期胎盤において、ACE2は極めて高いレベルであった。それゆえ、妊娠初期・中期では、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス「SARS-CoV-2」による胎盤感染リスクが高まる。
また、免疫反応の遺伝子マーカーが胎盤にて増加し、新型コロナウイルス感染症に感染した妊婦では遺伝子発現が異なり、胎盤にて炎症誘発性遺伝子、ケモカインが多く認められた。
妊娠中に新型コロナウイルス感染症に感染した場合、胎盤の細胞タイプ1種は「SARS-CoV-2」に感染するが、胎盤感染が起こることは稀である。しかしながら、研究チームは、胎盤組織にウイルスは検出されないにも関わらず、妊娠中の「SARS-CoV-2」感染は母親の免疫反応を強め、妊娠継続に悪影響を及ぼすと結論付ける。
(画像はmedRxivより)

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