不妊治療の新たな展望
イェール医学大学院の研究チームは、「eLife」にて、マウスを用いた動物モデル実験を通じて、精子タンパク質「CATSPER1」が分子バーコード(RNA分子一つ一つを区別できるバーコード)として働き、精子選定に関与していると発表した。
女性の体内に入った精子のうち、子宮を経て卵管に進入できるものは少数である。さらに、卵管に入った精子のうち、卵管内の卵子まで到達して受精できる精子は一つのみ、他は卵管内に入れずに排除される。
今回、「CATSPER1」によって、卵管に進入した精子のうち、卵子まで到達する精子と排除する精子が決定されると認められた。これは、卵管への進入後の精子選定プロセスを解明するうえで重要となり、生殖補助医療の発展、新たな不妊治療法の開発につながると期待される。
卵子と受精できる精子の必須条件
研究チームが、マウスを用いた動物モデル実験を行い、新たな分子イメージングを用いて雌マウスの精子選定プロセスを観察したところ、精子と卵子の受精において、精子タンパク質「CATSPER1」が無傷であることが必須条件であることが明らかになった。
「CatSper1」は、精子尾部を覆おう膜にカルシウムを流し込むチャネルを作るタンパク質4種のうちの1種である。チャネルは、精子運動および生存にとって不可欠となり、卵管内にて「CatSper1」が取り除かれた場合、精子は、決して卵子と受精することができず、死滅する。
なお、今回の研究には、研究チームが独自に開発したイメージングプラットフォームが用いられている。独自の新技術によって新しい展望が開かれ、今後、受精プロセス、受精卵の子宮着床過程を解明できるという。また、受精における精子の分子事象を視覚化および分析でき、新たな不妊治療法の開発に活かせると期待される。
(画像はプレスリリースより)

eLife
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