妊娠期における高用量ビタミンD摂取の効果
ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学大学院の研究チームは、「JAMA Network Open」(10月5日掲載)にて、子癇前症の母親における高用量ビタミンD摂取は、子供の高血圧を予防すると発表した。
今回、子癇前症の母親が高用量ビタミンDを摂取することにより、胎内の子供に対して高用量ビタミンDが供給され、母親の子癇前症に伴う高血圧リスクは軽減または排除されると判明した。
子癇前症による健康影響
子癇前症は妊娠期に発症する疾患であり、母親の肥満と関連する。母体において高血圧や臓器不全を引き起こし、早産・死産リスクが大幅に増加する。妊娠期に母親が子癇前症を発症した場合、子供の高血圧リスクは大幅に増加するといわれる。幼少期の高血圧は、成人期に高血圧や心臓疾患を誘発する。
また、母体のビタミンD欠乏は子癇前症の発症リスクを高め、幼少期あるいは成人期のビタミンDが少量である場合、高血圧リスクが大きくなるという。
妊娠期のビタミンD摂取量と子供の高血圧リスクにおける関係性
研究チームは、ボストンメディカルセンター(米マサチューセッツ)実施の大規模な疫学調査(1998~2018年)を用いて、母子754組を対象に、妊娠期のビタミンD摂取量と子癇前症の母親から誕生した子供の高血圧リスクにおける関係性を検証した。
データには、母親の子癇前症歴、臍帯の血液検査(出生時)、子供の血圧測定(3~18歳)が含まれる。子癇前症の母親から誕生した子供は、子癇前症を発症していない母親の子供と比べ、収縮期血圧(上の血圧)が高く、高血圧リスクも増加した。
また、臍帯血のビタミンD量は、母親の子癇前症と子供の高血圧における関係性を修正することが認められた。
臍帯血のビタミンD量が少ない場合、子癇前症を発症した母親の子供の高血圧リスクは、子癇前症を発症していない母親の子供より高くなった。一方、子癇前症を発症した母親の子供において、臍帯血のビタミンD量が多い場合、高血圧リスクは、子癇前症を発症していない母親の子供と大差なかった。
循環器系疾患リスクを増加させるメカニズムは、大部分が在胎期にプログラミングされる。今回、ビタミンDには循環器系疾患リスクを増加させるメカニズムを改善し、リスクを軽減させる効果があると確認された。しかしながら、ビタミンDが母体の子癇前症と子供の高血圧における関係性を修正するメカニズムの解明には至っていない。
(画像はJOHNS HOPKINS UNIVERSITY BLOOMBERG SCHOOL of PUBLIC HEALTHより)

JOHNS HOPKINS UNIVERSITY BLOOMBERG SCHOOL of PUBLIC HEALTH
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