安全かつ効果的なアプローチ
コクランレビューは、生殖補助医療(ART)において、胚移植数日前に胚培養液の上澄みを子宮内膜に注入することにより、妊娠率・出生率が向上すると発表した。
また、これまで、安全性が疑問視されてきたが、生殖補助医療を受ける女性にとって安全かつ効果的なアプローチであると報告された。
妊娠率の向上が課題
生殖補助医療は不妊治療に用いる技術であり、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)が最も一般的な治療法となる。医療機関およびラボなど専門家らによる献身、不妊治療成功率の向上にも関わらず、いまだ妊娠率は極めて低い。
体外受精では、女性の卵巣から卵子を採取し、培養内にてパートナーあるいは第三者(ドナー)から提供された精子と卵子の受精を待つ。受精卵は、胚移植に適した状態になるまで胚培養液内にて培養され、その後、子宮へ戻す。一方、顕微授精では、培養液内にある卵子に精子を直接注入し、受精を促す。
体外受精および顕微授精におけるSEET法の効果
胚移植・子宮着床には、母体組織と胚の間にてコミュニケーションが不可欠であるが、子宮内膜の受容性が大きく影響している。
今回、研究チームは、医療データベース(2019年12月~)を対象に包括的な文献検索を行い、ランダム化比較試験(RCT)を用いて、体外受精および顕微授精におけるSEET法(シート法:胚移植数日前に胚培養液を子宮へ注入する)の効果を検証した。
体外受精および顕微授精において、胚移植数日前に胚培養液の注入を行った場合、通常の治療(胚培養液の注入がない)と比べ、妊娠率は改善され、流産率は減少する傾向が認められた。
研究チームは、胚移植に備えて、子宮に胚培養液の上澄みを注入することで子宮内膜が刺激され、胚の子宮着床を促進させると提言する。これにより、生殖補助医療における出生率が改善されると期待される。
(画像はCochraneより)

Cochrane
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