母親の免疫反応と子供の神経発達障害
カリフォルニア大学デービス校 神経科学センターの研究チームは、「Brain, Behavior, and Immunity」にて、子マウスの免疫システムが活性化した場合、妊娠前の母マウスの免疫反応によって、子マウスにおける行動障害の可能性を予測できると発表した。
今回、マウスによる動物モデル実験を通して、妊娠期の深刻な母体感染が、子供の成長・発達に対して影響を与えることが明らかとなった。妊娠期の母親が深刻な感染症に罹患することにより、子供において自閉症スペクトラム障害などの症状を進行させると報告された。
妊娠期の母体感染と子供の神経発達における関係性
研究チームは、妊娠中の雌マウスを用いた動物モデル実験を行い、妊娠期の母体感染と子供の神経発達における関係性を検証した。
雌マウスにインフルエンザ、新型コロナウイルスを含むウイルス性二本鎖RNA類似物資「ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリI:C)」を投与したところ、免疫システムは、ポリI:Cをウイルスと認識した。即座に炎症反応を引き起こし、特に、インターロイキン-6(IL-6)が分泌された。
特定のマウスでは、妊娠前にインターロイキン-6がポリシチジル酸に反応し、子供の行動障害の可能性を予測できることが認められた。一方、月齢、遺伝的背景、飼育環境は同じ条件であったにも関わらず、免疫反応は広く異なった。
脳発達に関与する遺伝子およびタンパク質は、免疫活性化の影響を受け、神経発達障害を引き起こす。それゆえ、研究チームは、妊娠前の免疫反応性によって子供の行動障害の可能性を予測できると結論付ける。最終的にはヒト臨床試験を実施するが、今後はマウスの追跡調査に加え、動物モデル実験を実施していくという。
(画像はプレスリリースより)

UCDAVIS
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