より客観的な胚の選出
米国物理学会(AIP)は、「Biomicrofluidics」にて、超高感度タンパク質検出により、胚の質を評価できると発表した。液滴ベースのマイクロ流体力学(microfluidic droplets)と多色蛍光を用いて受精卵(胚)から分泌された微量のタンパク質を検出し、胚を選択する。
生殖補助医療(ART)において、胚の選択は極めて重要な役割をもち、最も大きい成長可能性がある胚を選択することが妊娠につながり、不妊治療の成功率を高める。
従来の方法は、主に形態学的スコア(形態学的評価)によって胚を選択する。形態学的スコア(形態学的評価)は胚の形成・形態に基づくが、発生学者が胚の形態を評価するゆえ、主観的かつ固有変動性がある。
一方、超高感度タンパク質検出では、胚から分泌されたタンパク質の含有量を検出し、胚の質を評価する。それゆえ、より客観的に胚を選出できる。
胚のタンパク質による胚選択
研究チームは、2019年5月から6月に掛けて、中国・深センにて患者30人から採取した使用済み胚培養培地を分析した。
セクレトーム(細胞、細胞組織、器官から分泌されるタンパク質)を分析したところ、微量のタンパク質を検出できた。質の高い胚盤胞では、質が低い胚盤胞と比べ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:胎盤から分泌されるタンパク質)の分泌量が顕著に高くなった。質が低い胚盤胞では、胚は成長できない。
タンパク質は非常に少量であるため、検出ツールには限界があるが、提案した方法は、分泌液網羅解析(セクレトミクス)に基づく、成長可能性の高い良質胚の選択法であり、数滴の培地により選択できた。マイクロ流体力学チップの使用により、少量の液体を処理または視覚化が可能となる。
今後、研究チームは、胚から分泌される他のタンパク質を分析し、胚の質との関連性を検証していく。
(画像はプレスリリースより)

AIP
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