母体の慢性炎症による影響
ヘルシンキ大学(フィンランド)の研究チームは、「Biological Psychiatry」にて、妊娠期の軽微な慢性炎症が子供の神経発達を遅らせると発表した。妊娠期の母親が肥満、糖尿病、高血圧、鬱病、不安障害であった場合、その子供は、幼少期に学習障害、行動障害、メンタルヘルス問題を抱える可能性が増すと報告された。
母親の慢性炎症は、神経発達軌跡を変化させる要因に成り得る。動物を含む先行研究では、母親の炎症は、子供の神経発達を遅延させるメカニズムとして関与した。
出生前の炎症への曝露と子供の神経発達
研究チームは、「Prediction and Prevention of Pre-eclampsia and Intrauterine Growth Restriction(PREDO)」より南・東フィンランドの妊婦418人とその子供(7~11歳)を対象に、データ分析を実施した。
「PREDO」は妊娠期の子癇前症を防ぐことを目的とした調査であり、被験者は肥満、妊娠糖尿病、高血圧を含む危険因子の有病率が高かった。
妊娠期の母親に対して炎症性バイオマーカーを3回採取し、うち2回分を分析したところ、母親の不健康な代謝状態・精神状態と出生前の炎症曝露に関連性が認められた。
在胎期の子供が、母体の悪い代謝状態あるいは不健康な精神状態による炎症に最低1度でも晒された場合、出生前の炎症への曝露がない子供と比べ、神経発達の遅延リスクが2倍増となった。
研究チームは、より高いレベルの炎症への出生前曝露は、子供の神経発達を遅らせるリスクを高めると結論付けている。また、今回の研究結果より、出生前の炎症への曝露を軽減させ、子供の神経発達を改善させる潜在的な治療戦略が導かれると考える。
(画像はBiological Psychiatryより)

Biological Psychiatry
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