GnRHアゴニスト療法による効果
8月9日、ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)などの研究チームは、「Human Reproduction」にて、子宮内膜症の腹腔鏡下手術を受けた女性が新鮮胚を用いた体外受精を行う場合、治療開始に伴うGnRHアゴニスト療法(偽閉経療法)に妊娠可能性を改善する効果は認められないと発表した。
子宮内膜症の女性では、不妊治療開始3ヶ月から6ヶ月前からGnRHアゴニストを投与することにより、妊娠成立(胎児心拍が確認できる臨床妊娠)の確率が高まるといわれる。
GnRHアゴニスト療法とは
GnRHアゴニスト療法(偽閉経療法)では、脳下垂体に働いて卵巣を刺激するホルモン「性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)」の分泌を抑える。
エストロゲン(女性ホルモン)の産出・分泌を抑制し、閉経と同レベルまでエストロゲンを下げて卵巣の働きを低下させることによって、子宮筋腫や子宮内膜症の症状は改善するという。
GnRHアゴニスト療法と子宮内膜症の体外受精妊娠率
研究チームは、2013年1月1日から2016年12月31日の期間、腹腔鏡下手術を受けた子宮内膜症の女性42人を対象に、子宮内膜症に対するGnRHアゴニスト療法の治療効果を検証した。
なお、被験者は、ルーヴェン・カトリック大学不妊治療センターにて、子宮内膜症や女性不妊の治療を受ける患者から無作為に選出された。
GnRHアゴニスト療法を行うグループ、コントロールグループに分けて治療効果を比較したところ、両グループの体外受精妊娠率は僅差であった。
今回の臨床試験は、小規模・短期間で結果は限定的であるものの、研究チームは、子宮内膜症の腹腔鏡下手術を受け、その後、不妊治療を開始する場合、GnRHアゴニスト療法には、体外受精妊娠率を大きく改善する効果はないと考える。
(画像はHuman Reproductionより)

Human Reproduction
https://academic.oup.com/